コンサルティング実績

タイ現地社員の意識革新で高収益体制を構築

 ミツイ ハイジーン マテリアルズは、三井化学株式会社の100%出資の関係会社としてタイに設立された。医療や介護の場で使用される 不織布や通気フィルムの製造・販売を担う同社では、現在もフル生産の状況が続いている。
 「生産性アップにはタイ現地社員の戦力化がぜひとも必要」--本社方針がきっかけで開始された意識改革の取組み。そのポイントは現地社員が 自分たちの言葉でコミュニケーションできる改善活動にあった。

MITSUI HYGIENE MATERIALS(THAILAND)CO.,LTD.(President 稲垣 隆之氏)

タイ現地社員の意識革新で高収益体制を構築
稲垣社長がタイに赴任されて3年近く経過されたとお伺いしております。本日はその期間にご導入されたコンサルティング活動について お話しをお伺いできればと思います。まず、はじめに御社の概況について少しお聞かせいただけますでしょうか。
 私がタイに来てから2年と9か月が経ちました。当社は三井化学株式会社の100%子会社として、2001年8月に設立されました。 当初の事業は紙おむつ向けの不織布の製造からスタートしました。工場が完成して営業運転を開始したのは2003年3月ですが、それ以降は 不織布のラインをもう一系列増やしたのと、同じく紙おむつに使われる通気フィルムの生産ラインが2系列を加えて、全部で4系列の生産 ラインを保持するようになりました。
御社がタイにご進出された背景をお伺いしましたが、その過程でコンサルティングを導入されるに至ったきっかけはどのようなものでしたか。
 当工場の生産能力は、不織布2系列で約3万トン、通気フィルム2系列で約6千トンですが、市場ニーズが高く、現在もフル操業の状況が 続いています。そういった中で生産性の向上を目指して、タイ人現地社員の地力を上げることが課題になってきました。コンサルティング導入の きっかけとしては、本社からマネジメントの現地化を進める方針がでたのが一つです。この課題を進めていくにあたり、タイ人マネージャーの 能力の底上げが必要だという実感が起こってきました。そこで何らかのトレーニングを入れることを検討し始めました。
 もう一つの動機は、工場が立ち上がってすでに8年いた生産数量がどうしても達成できないという状態にありました。そういった経緯の中で、 テクノ経営のVPM活動に出会い、取り組んでみようということになりました。
ありがとうございます。そういった導入の経緯において、現地社員の皆様方のコンサルティングに対する反応はどうでしたか。
 コンサルティング開始後、最初の反応としては非常に戸惑っているなという感じを受けました。それまでは個人中心で動いていた 職場環境でしたから、全体活動を受け入れるのには少し時間がかかったようです。しかし、活動を続けるなかで徐々にお互い協力し合う、 みんなで考えるということができるようになってきたと感じています。
 今回の活動は、最初からタイ現地社員の主導でやると決めていました。ですから、基本トレーニングもタイ語の通訳を入れて進めました。 それまでの活動は英語が主体で、社員の感想としては消化し切れないものがあったようです。しかし、今回からは、母国語のコミュニケーションで 議論が進んでいくので、そういうところが取組み易くなったと思います。活動プロジェクト名も「チュアイ・キット チュアイ・タム」と いうタイ語で表現しました。「一緒に考えて、一緒にやりましょう」という意味ですが、これも彼らの議論から生まれてきたアイデアです。
自分たちの言葉で話し合うこと。これは成功するコミュニケーションの鉄則ではないでしょうか。最初は個人中心に仕事を進めていた 現地社員の皆さんですが、活動後のグループリーダーの方々はどのように変化されたでしょうか。
 もともと優秀な部類のリーダーについては、知識を吸収してより良くはなったとは思いますが、あまり大きな変化は感じません。 逆に成長の度合いとしては、どちらかといえば中から低レベルのマネージャーがかなり伸びたと感じています。意識の変化では、以前より 飛躍的に高い意識を持つようになったという気がします。どちらかというと、そういう人達は苦手な英語が足かせになってプレゼンテーションも 上達しないという状況にあったと思います。しかし、そういった部分がタイ語で堂々とプレゼンテーションができるようになって、 自分のことが認められていくということに喜びを感じるようになったのではないでしょうか。そういった意味でリーダークラスの底上げに 成功していると思います。
VPM活動には、C改善・D改善といったプロセスがありますが、タイ社員の方々はどのように受け止められたのでしょうか。
 私自身も最初はすごく心配しました。各職場で進める日常活動のC改善については、最初の1か月位はバタバタしていましたが、 翌月になってからは何とか定着してきました。その後は今まで2年間やりましたが、問題なく続いております。それでC改善については 意識として定着したのかなと感じています。
 D改善については、C改善がある程度進捗した半年経過後より導入を計りました。D改善は、プロジェクト方式で目標を作って 取組んでいくという形でやっています。その過程で改善の手法はかなり身に付いてきたなと思います。ただ、取組んでいるテーマはかなり難しく、 目標レベルも高いため、なかなか目標に到達しない部分もあるのが実情です。彼ら自身も苦しんでいるのですが、この苦しみを乗り越えた ところにまた一段の飛躍があるのかなと期待しています。
社長様がご覧になるところでは、リーダークラスあるいはリーダーからワーカーのクラスで各々の目標意識や達成意識が高まってきた ということでしょうか。
 やはり目標が皆さんの中で共有されるようになったことが大きい。それまでは個人個人が勝手な目標を描いていた感じでしたが、 まず目標を共有できるようになったことがよかったと思います。
全社的な改善活動を2年余り続けられて、一つの期待するリーダー像が生まれつつあるのではないでしょうか。これからの活動に向けて 強化されたいポイントをお聞かせください。
 そうですね。現状に満足せず、活動を更に深掘りしていくことが必要だと思います。今まではコンサルタントの意見を取り入れながら 改善を進めてきたのですが、これからは自分たちで活動を考えられるような自主性を持つことが大切です。また、それがないと、複雑な難しい 問題を解決していくことはできません。手法・手段だけでなんとかなるレベルから、今一歩の深耕が必要な問題に挑戦する力を養うことが必要です。 そういったところをタイ人社員の皆さんが自分の力でやっていけるようにしたいと思います。
意識を変えるということは、どんな組織にとっても大変なことだと思います。社長様が赴任されて3年弱の間、組織変革と取り組まれる 過程でどういったところにご苦労されましたでしょうか。
 苦労はどこに行ってもするものですが、タイ人社員とのコニュニケーションが一番の苦労でした。例えば、彼らはできないことを率直に できないとはいいません。なるべく相手の期待に応えた返答をしようとする。ところが、こちらの期待はそうではなくて、むしろ問題はなにか ということを彼らが見つけて「こういう問題があります」と言ってほしいわけです。そうした問題を一緒になって考えてやっていくのが会社で あって、彼らだけに責任を押し付ける考えは毛頭ありません。しかし、彼らとしては責任を負わされるという意識があるのか、いい言葉で言えば 弱音を吐かないということになるのでしょうか。しかし、実際には問題を見ても見ぬふりをしている部分もあって、そこが一番難しいところでは ありますね。
 私自身も海外は2回目で、初回はアメリカの工場で4年、今回がタイになります。海外では、責任が絡むことに関しては、日本人とは違って 回避したがる傾向が見られます。そういったことに対して、できないから責任を取れというのではなく、日本風に一緒になって考えるという 経営スタイルをどうやって持ち込むかということです。今はまだトップダウンですが、最終的にはボトムアップができる会社に変化していければ かなり強くなれるのではないかと思います。
意識の違いがコミュニケーションギャップをもたらします。また、社会文化による認識の差異にも大きいものがあります。そういったなかで、 全体活動の定量的ターゲットは設けておられましたでしょうか。また、目標と活動成果はどうでしょうか。
 定量的な数字を上げるのは難しいですが、生産性で言えば1年目で約5%、2年目でも約5%アップというイメージです。また、品質管理 としては不良率等を活動指標にしていますが、毎年ほぼ半減できたと思います。数値的には2年前の1/4程度になっています。
歩留り率についてはいかがでしょうか。
 歩留り率は先ほどの生産性5%の一部に含まれます。実際の改善度は1~2%の世界です。どちらかといえば停止時間を減らすことによる 改善が大きかったかなと思います。それまでも歩留りの向上対策はずっとやってきましたが、今回はD改善という形で新しい取組みの仕方や改善の 管理手法を取り入れていきました。しかし、ここにはまだ難しい問題が残っているようです。
マネジメントのご苦労をいろいろお伺いいたしました。やはりコミュニケーションと行動をいかに結びつけるかということが課題になってきます。 そういった中で私どもの活動をご導入いただいたと思っております。最後に活動を通じてのエピソードのようなことや現場から出てきたお話しとか ござましたらお聞かせください。
 思い出すエピソードとしては、なかなか活動が上手く進まない最初のころ、管理職の女性が泣いて部屋から出てきたことがありました。 今思うと、その娘が一番成長したのではないかと感じていますが。
活動を進められ苦労され成長されたのだと思います。それでは、御社の今後のご発展に向けてのビジョンをお聞かせください。
 現在もフル生産、フル販売が続いており、生産性を上昇できれば収益も向上できると思います。生産ラインについて海外での増設を 考えていたのですが、本社方針で中国に工場進出することが決まりました。ただ中国で使う技術はタイ工場で使っているものを使うことに なりました。我々の技術を改善手法も含めて中国工場で展開できればいいなと思っています。日本にも一社、兄弟会社がありますが、タイ、 中国と三社がお互い協力しながらアジアにおける生産を強化したく思っています。そして、できれば我々がマネジメントの力を上げていきながら、 中国の次のラインをタイに呼び込みたいと思っています。
本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。