コンサルティング実績

全員参加のボトムアップ活動で黒字経営化!
“BETTER WORK””BETTER LIFE” NEO SKM活動

 SKM(SIAM KEEPER MANUFACTURING CO., LTD.)は、キーパー株式会社の海外生産拠点の一つ、 日系企業が数多く進出するタイ・アマタナコン工業団地に工場を構える。
 SKMの従業員は約300名、自動車用ゴム製品、O/Dリング、オイルシール類、その他の工業用ゴム製 品などの製造を行う。目立たないところで使われる製品だけに品質や信頼性に関する要求は極めて高い。 新幹線の台車にも使われる同社の製品は、開発・設計から生産・販売までスピード感ある一貫システムで、 国内外のユーザーからの高い支持を得ている。
 SKMの設立は2002年、工場は2003年から稼働を開始した。キーパー株式会社の海外生産拠点は4ヵ 所あるが、SKMは日本と同じ設備を有し、製品の輸出先はASEANから北米・メキシコ・中国・インド・ 英国まで幅広いのが特色だ。
 「今年で15年目に入るが、実は2014年までは累積赤字が解消されない状況だった」と語る三石社長。こ れまでも社内で改善活動を進められてきたが、どうしてもトップダウン的な活動になりがちで、各部門の 連携がうまく取れないフラストレーションを感じていたという。なんとか黒字体質の会社に変革したい。 積年の赤字解消をめざして、生産性と品質向上が急務となっていた。

SIAM KEEPER MANUFACTURING CO., LTD.(President 三石 均氏)

全員参加のボトムアップ活動で黒字経営化
VPM活動との出会い
 これまでも社内で進めてきた改善活動。その経験 を通じて、タイ人マネジャーやスタッフの活動に対 する意識や技術力は確かに向上してきたという。た だ、せっかく個人の高い能力があっても、部門間の 連携やコミュニケーションが悪ければ改善成果がつ ながっていかない。最も大切な課題はタイ人監督者 のリーダーシップ力向上である。上からの指示では なく、現場力を発揮した改善であってほしい。その ためには第一線で活躍するミドルクラスが育ってい かなければならない。ところが、その教育を行うに も多忙な日常業務と言葉の壁に阻まれ、充分な指導 や教育ができないジレンマがあった。
 生産量が増加するなか、賃金アップやアマタナコ ンで困難化するワーカー確保など、問題は増え続け る。売上アップと規模拡大のチャンスを目前に改革 のスピードを速めたい。そんな折、TMCTのセミナー にご参加いただき、生産性向上と人材育成を進める 「VPM活動」を知っていただいた。 コンサルティングを導入して改善活動を進めたい と判断された理由は、「VPM活動が私たちの抱えて いる改善テーマと一致することを知ったから」(三石 社長・談)。人の意識と行動に焦点を当て、全員参加 の活動で生産性向上をめざすVPMの考え方がマッ チしたためである。
工場診断で現状を知る
 課題は、売上は拡大傾向だが利益が伴っていない ことである。現場にある数多くのムリ・ムダ・ムラ が利益を圧迫している。そこでMan(人)、Machine (設備)、Method(方法)の観点から工場診断による工 場の現状分析を試みることにした。それによりこれ から進める改善活動の方向性も決まってくる。
 製造部門には、Preform(前工程/接着・カット)、 Molding(射出成型・組立)、Trimming(検査・トリミ ング)の3工程がある。1日をかけてコンサルタント にお願いした工場診断。その結果、把握された課題 は人・設備・方法に関するものであった。
 作業に対する姿勢はまじめだが業績に反映されて いない。何をいつまでに完了させるのか、目標や達 成度の見える化により作業者自身の目標設定を進め ていかなければならない。
 その鍵はミドルクラスのレベルアップ。モチベー ションは高いがヒューマンスキルに問題がある。成 功体験が少なく、行動による知識と経験がないため、 日々の業務における疑問が出てこない。コミュニケー ション不足が部門間の連携を阻んでいた。
 明確な管理指標を策定し、全社で共有化すること も必要だ。安定基盤である売上確保と営業利益の向 上、それを300人体制で実現する。
 トップダウン傾向が強かった過去の社内改善では、 問題が発見されても肝腎の真因追究ができていなか った。当時者意識として現場の問題認識が甘いため、 どうしても改善のスピードが遅くなる。この欠点を 補うため、これからの活動は現場主導のボトムアッ プで進めることになった。
現場主導で活動開始
 2015年7月にスタート、活動名は従業員より募 集したもので、NEO-SKM(New way to work Effective in our Organization)と決まった。これは「私たちの新 しい働き方は私たちの新しい効果を導く」という意味 である。
 活動スローガンは、“ BETTER WORK BETTER LI F E ”(より良い働き方、より良い生活)。より「仕 事を快適にする」ことで、働きやすい職場をつくる。 それを通じて、「会社の成長」と「社員の幸福度」を増 すという活動の目的を定めた。
 活動組織は、エクゼクティブプロジェクトリー ダーである三石社長のもと、堤坂氏がプロジェクト リーダー、5名のシニアチームリーダーが活動事務 局を担当、コーディネータ(5名)が協力メンバーと なって組織された。
活動の取り組みについて
 全社的な課題は生産性向上、品質改善、コストダ ウンなどに及ぶ。社長方針として示されたKPIマト リックスでは全社的な生産性向上10%が打ち出され た。品質については不良率 、不良コストを半減 する。 購買コストダウン2%、年間450万バーツの物流コ ストの削減等が目標とされた。
 NEO SKM活動では、設備と人の生産性向上を中心 に、設備総合効率:Overall Equipment Efficiency(稼 働率×性能×品質)と労働生産性(生産量/労働時間) を活動指標とした。コミュニケーション向上と部門間 連携力の強化により全社的な生産性向上やコストダウ ンに寄与していくことが目的だ。
 活動成果として、設備総合効率(OEE)および部門 全体の生産性は目標をクリアした。結果として翌年か らスタートした改善活動は見事に実を結び、2016年 には黒字となり、累積赤字も解消された。活動の進捗 により目標値も上昇していくが、各メンバーのレベル アップにより、さらなる高みをめざして活動が続けら れている。
ステップアップのために必要なこと
 成果報告会で、メンバーたちは今後の取り組みを発 表した。それは自分たちの活動として継続していくと いうこと。そのために改めて自分たちの活動における 強みと弱みを確認する。
 強みは活動に前向きに取り組むチームワーク、弱み はさらなるレベルアップの必要性。
 各部門の重要課題を解決するため、社長方針に応え るアクションプランを自分たちで作成する。工程のな かのロスタイムを減らす、業務の見える化をはかるなど、 より高いレベルと新しいテーマに向けてNEO SKM活動は継続されている。