タイ産業構造の変化

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■タイランド4.0による産業構造の転換

タイ政府が提唱する「タイランド4.0(Thailand 4.0)」とは、2015~36年の20年間で高所得国化をめざす長期的な経済開発計画である。
アジア通貨危機以降、落ち込んだタイ経済。バーツ暴落で国民生活は困窮した。その後、2011年の大洪水等もあったがタイ経済は順調に回復、その後はもっぱら経済の安定が重視されてきたのだが、近年の経済成長率はASEANの最低ランクに。今後は高齢化が加速する社会状況もあり、タイ政府は期限付きの長期ビジョンの発展戦略に打って出た。
タイの経済発展は、第1段階は農村社会、第2段階が軽工業の時代、第3段階が80年代後半以降の外資導入による発展期に区分されるという。そして「タイランド4.0」では、タイ政府が指定したターゲット産業の育成により産業構造の転換が進められることになる。
そのターゲット産業とは、次世代自動車、航空、スマートエレクトロニクス、ロボット、デジタル産業、バイオ、医療などの先進10分野。イノベーション・生産性・サービス貿易をキーワードにより創造的な社会建設をはかる構想だ。

■東部経済回廊にかける期待

そのタイランド4.0の舞台として、いまタイでホットな地域が「東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)」である。タイ政府は東部にあたるチャチュンサオ、チョンブリ、ラヨーンの3県を新経済特区に指定、法人所得の大幅減税などの投資奨励策によりハイテク産業の誘致を拡大する。
これらの優遇策は日本企業にもメリットが感じられるが、昨年(2017年)9月、日立製作所は日泰国交樹立130周年の関連イベントの席上でタイのEEC政策委員会との協力合意書を締結、東部経済回廊に拠点を建設することを発表した。タイ政府のインフラ整備やASEAN地域のIoT基盤構築に働きかける方針である。
EECにおける物流においては渋滞の緩和が課題だが、EECではレムチャバン港とウタパオ国際空港の整備が進められている。まずレムチャパン港はバンコクの南東130キロメートルにあるタイ国内で最大の貨物取扱量を誇り、さらなる拡張で世界屈指の商業港を目指す計画が進められている。主に自動車輸出用の深海港で大型コンテナ船が入港できる。鉄道とトラックの併用でバンコクまでの物流を迅速化するシステムの運用ももうすぐ始まる予定である。
またウタパオ国際空港は、バンコクから160キロメートル、タイ第3の主要空港として周辺工業団地へのアクセスや物流ラインの形成に役立てる。そして高速鉄道については、現在バンコクを中心に日本や中国とのプロジェクトが決まっているが、EECに関しては、バンコクとラヨーンを結ぶ高速鉄道の建設が構想されている。
 

■デジタル技術化と人材育成が課題

タイの政治はとかく複雑である。デモやクーデターが多いのが特色だが、2014年にプラユット将軍による国軍のクーデターが勃発し、憲法と議会を廃止。実権を把握したまま軍事独裁政治が継続中なのだ。なんとそれまで過去42年間にクーデターが5回も起こっている。
しかし、それでも経済が安定しているのは、国民の柱として信頼の厚いプミホン国王が混乱を鎮めてきたからだといわれる。しかし2016年10月にその国王が崩御、70年という長い在位だったから、大半のタイ国民にとって国王のイメージはプミホン国王以外になかっただろう。
タイランド4.0の実現には、インターネット環境等のデジタル技術の活用が不可欠である。タイでもスマートフォンの普及など、生活のデジタル化が進んでいるが、タイランド4.0のための計画としては「タイ・デジタル経済社会開発20カ年計画」がある。これは生産性向上や産業構造の高度化、雇用拡大と所得格差の是正を通じて、ASEAN経済共同体における存在感とガバナンス強化を目標とするものである。
そして、タイが抱えるいま一番の課題は、ターゲット産業を支えるタイ人高度人材の育成をはかることである。研究開発においても、研究者やエンジニアの質を強化することが求められている。

(株式会社テクノ経営総合研究所 現地レポート)

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