香港で考える中国事業のこれから

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■国際ビジネス都市・香港

2017年の「国際競争力ランキング」(IMD国際経営開発協会)で香港は第6位。アジアではシンガポールが3位で最上位にランキングされた。ビジネスの自由度やビジネス法制度の優位性、 高度なインフラ環境など、香港が持つ長期的な潜在競争力は、依然として世界のトップクラスとして評価されている。
香港もシンガポールも英国を旧宗主国とする点では共通している。しかし大戦後に独立を果たしたシンガポールに比べ、香港は20年前までは英国から自治権を認められた自由貿易港として存在した。それだけに中国の伝統と西洋的な要素が融合した独自の文化が生まれている。産業・就業構造の急激な変化に柔軟に対応しながら、国際競争力を維持してきたのがものづくり分野と関連した香港の姿である。70年代には、軽工業による輸出加工で新興アジア勢力の一翼を担った香港は、 中国開放政策後は広東省経済特区との一体化が進み、中国華南地域に向けたビジネス拠点としての存在力を高めてきた。

■中国返還から20年-変わる香港の街

昨年は中国返還20周年。香港の街も変わったが、この20年には苦難の歴史もあった。たとえば返還に発生したアジア通貨危機、2003年にはSARSが流行し香港経済は大きな打撃を受けた。また民間では香港の自由化を脅かす中国政府の介入を警戒する民主化デモがたびたび発生。2008年には北京オリンピックの愛国教育の強要に反発デモ、2014年には学生を中心に3ヵ月以上に及ぶ民主化を要求する雨傘運動が衆目を集めた。
 数年前、筆者が香港の街を歩いていて驚いたのは、中国政府が禁止するある宗教団体が路上集会をしていたことだ。しかも、その近くの広場ではその団体に反発する中国系の団体が反対のメッセージを訴えていた。これが香港の民主化なのだと思った次第である。

■中国一体化の進展

中国では習近平国家主席が提唱する「一帯一路」の経済圏構想が進展している。中国にとって香港は世界市場に向けた中継地であり、海外展開の柱と位置づけられている。そして、その華南版プロジェクトともいえるのが、開通を目前に控える香港と珠海(広東省)、マカオを結ぶ「港珠澳大橋」で、完成すれば全長55キロメートルを複数の海上橋と海底トンネルで結ぶ世界最長の橋となる。
そして中国との距離を縮めるもう一つのトピックスが、今年の開通が予定されている広州から香港を結ぶ「広深港高速鉄道」である。香港から中国に入るには、紅磡(ホンハム)から広州東まで現在の廣九鉄路で約2時間かかるが、その所要時間が開通後は約48分になり、深圳までならわずか14分程度で行けるようになる。
また中国の高速鉄道に乗り入れれば北京までもわずか10時間程度で行くことができ、中国への移動時間が大幅に短縮されることになる。これらの中国政府が進める巨大プロジェクトは香港経済に大きく貢献することは間違いない。ただ、高速鉄道の開通についていえば、香港の西九龍駅に中国側イミグレーションが設けられることが香港市民の反発を招いているようだ。

■香港から海外市場をターゲットに

こうした中国本土との近接感を受けて、香港から中国に事業展開する企業も増えている。
たとえば2005年9月に香港に1号店を開いたユニクロ香港の店舗数は現在27店に増え、いまでは香港の街の風景にすっかり馴染んでいる。これは中国や東南アジアでも見られる傾向だが、日本製品の品質や安全性がアジア諸国で高く評価されていることを示す。
中国では、近年、日本式の社員教育が注目されている。社是や社訓の斉唱、ビジネスマナー教育など、協調性や責任感など日本人の勤勉さが評価されているためである。
中国で販売されるユニクロの商品は国内よりもやや高めに価格設定されているが、これは中産階層をターゲットに高級感を出す狙いがある。中国人の販売員が中国で製造された商品を売るのだが、ただしデザインや顧客サービスは日本式で行う、このホスピタリティが評価されているようだ。ユニクロ(ファーストリティテリング)の海外売上比率は約38%、中国や東南アジアが好調で過去最高の売上に達する見込みである。

(株式会社テクノ経営総合研究所 現地レポート)

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